おかさげ農園の由来
去年までは「大江自然農園」という名前でやっていまして、今年の1月(2022年)から
「おかさげ農園」に改名しました。
「おかさげ」は笠置山の昔からの敬称で、いつも笠置山に見守られて仕事をしてるので、自然と同化するという意味で「おかさげ農園」になりました。
自然農法をはじめたきっかけ
岐阜県恵那市に移住して10年になります。移住してすぐ農業を始めました。
もともとの出身は岐阜県の街中ですが、農業を始める前は関東の方で環境系のコンサルタントや自然環境の知識を活かした仕事などをしていました。
学生の頃は農学系の大学で生態学などを学んでいたこともあり、生きものや自然にふれあうということはベースにありました。
30代のころから農業や林業に興味はあって、そのころから田舎に住みたいという想いもでてきました。
生産者 大江さんご家族
それまでは実際に植物を育てるということを全くしたことがなかったので過去の経験とその想いを繋げたいなと思ったのがきっかけのひとつです。
他に、きっかけのひとつになったのは「自然農」の川口さんの書籍との出会いです。
仕事はやりがいがあり楽しかったんですが、毎日終電ギリギリでかなりのハードワークだったため、ある時体調を崩してしまいました。
体力には自身があったのに、歩けないくらいひどい状態で薬に頼る生活になってしまって。
そんな自分に生き物としての生命力を失ったように感じ、生きてる実感がなくなってしまいました。
そのころに川口由一さんの自然農の世界に出会ったんです。
川口さんの「形じゃない。あなたの生き方そのものが現れる」という自然農の考えにとても感銘を受け、その出会いがきっかけで自然農法を始めることになりました。
おかさげ農園の自然農法の畑
自然農と自然農法
正確には説明できませんが、川口さんがおっしゃられる「自然農」は、あえて「法」を取っているように、方法論やHOW TOといったものではなく自然に対する考え方や哲学なのだと思っています。
その人の認識が深まり、自然と対話しながら広がった世界が形にとらわれることなく田畑だったり、生き方だったりとして現れる。そういった認識論だと私は理解しています。
自然農法というのはもっとざっくりとした捉え方です。自然と対話しながら自分が表現する。それは自分のためではなくそこに育つ植物のための表現。
それが「自然農法」だと考えています。
おかさげ農園で作られたお野菜
自然農法と自然栽培の違い
おかさげ農園の人参畑
たしか一番最初に「自然栽培」という言葉を使われたのは木村秋則さんだったと思います。
自然栽培にはきちんとした定義があるんです。
自然農法にもあるんでしょうが、わりとざっくりとしていて、田畑との対話の中から生まれてくるものや、作り手の表現といった捉え方をしています。
自然栽培については「農薬や肥料は使わない」などといった定義があります。
畑がよくなっていく 不耕起栽培について
10年かけて土の状態は良くなってきてるのですが、ただ、10年かけてやっと良い畑に変わったというわけではなく、 例えばちょっとした経験で子供が成長するように、土も数週間から1ヶ月でガラッと変わってくるんです。
よく「いい土」「悪い土」と言いますが、それはその時の土の状態のことを言っているだけなんですね。
もちろん蓄積は大事です。ただ、蓄積がないからダメなんだということはありません。3日努力すれば、3日分の結果があるのと同じことです。
年々状態がよくなってきた土壌
植える作物によっても違ってきます。
あまり根の張らない葉物野菜などは土の浅い部分の状態が変わればよいので、さほど時間がかからず土壌が整います。
土というのは植物を支えていると思われていますが、じつは植物の根からいろんな栄養や物質が分泌されていて土壌微生物に栄養を与えています。植物と土壌微生物は共生関係があるんです。
共生関係があるので、植物を作れば作るほど土壌は整っていって畑はよくなっていきます。
機械を入れて耕すとそのよい土壌を壊してしまいます。
土と植物の共生関係を壊さないように、土が良くなっていけばできるだけ耕すことはしたくないですが、草の管理のため、表面だけ軽く耕すなど工夫しています。
色鮮やかでつやつやのズッキーニ
在来種とF1種
バターナッツカボチャも作ってます
在来種は古くから作っている作物で基本的に固定種ともいわれるものです。
在来種、固定種というのは、遺伝子に幅があるので出来る作物が不揃いだったりします。
例えば日本人という遺伝子の中に身長の高い人や低い人、色白や色黒の人というように幅があるといった感じです。
F1(雑種第1代)は、優性と劣性の品種を掛け合わせると、優性の形質が現れるというメンデルの法則を利用した技術です。
日本人は手先が器用なのでF1の技術は世界一で、日本の野菜の種子はほとんどF1といっても良い状態です。
F1種自体は、市場の安定や経済性のためには、非常にありがたいことで、必要なものだと思っています。
ただ最近は雄性不稔※といった種のない形質のものを遺伝の中に組みこんだりしているので、それは行き過ぎている傾向にあると感じています。
技術は素晴らしいのですが、何でも作り出してしまうというのはバランスを欠いてしまいますよね。
※雄性器官である花粉や胚のうが異常で,正常に花粉形成ができない現象。(抜粋:コトバンク)
青々とした野沢菜はお漬物に
不揃い?味が凝縮した在来種の人参
統一されたものだけでなく、やはり野菜にも多様性が大切だと思います。
周りをみてもそういう人参は売っていないので、在来種の野菜を徐々に浸透させていきたいと考えています。
肥料をあげる必要がない自然農法
みずみずしいレタス
よい土壌には糸状菌(キノコ菌)が菌糸を張り巡らせてネットワークを作って、そこにさまざまなバクテリアが住んでいてやりとりをしています。
その多様な糸状菌やバクテリアたちがどんどん集まって、生きたり死んだりを繰り返しながら複雑な関係を構築し、それが土壌の団粒構造※として現れます。
※土壌の微細粒子が集合して微小な塊状をなしていて植物にとって好ましい状態なこと。(抜粋:コトバンク)
その土壌に植物が根を張ると、植物の根自体はせいぜい知れていますが、その根にくっつく糸状菌のネットワークは数キロ先まで繋がっていると言われ、そこら必要な栄養が運ばれてきます。
だから肥料をあげる必要はないんです。肥料は仲間が持ってきてくれるんですね。
キノコは山の中で枯れ葉や腐った木などが累積したものを食べて育っていますが、窒素(N)が必要なタンパク質(細細胞)でみずみずしい体を作ります。 その栄養(N)はどこから持ってきたかと言うと、無限に繋がる糸状菌のネットワークからなんです。
土壌という社会の中にバクテリアや糸状菌などの生き物が増えて、その中で生きたり死んだりを繰り返ししながら団粒構造ができていきます。 そこに植物を委ねてあげれば植物は炭酸同化※して土壌に栄養(糖)を提供できるし、植物が自分では作れない窒素やその他の要素が欲しい時は、土壌の中の無限のネットワークから栄養を吸収するんです。
あま〜い玉ねぎ
※一般には外部の二酸化炭素を生体が同化して有機化合物を合成する過程をいう。(抜粋:コトバンク)
むしろ微生物のネットワークには人間が投入する肥料は異物なので、加えることでバランスを崩すと考えられます。 自然農法はその考えでやっています。
生き生きとしたエゴマ
本来は、土壌中の多様な微生物のネットワークとの関係で植物は人間の助けなどなくても当たり前に成長する生命です。
人間が肥料をあげることは、本来は、土のバランスが悪かったりするときに、植物の成長を補うための行為で、肥料をあげすぎると、植物が大量に不安定な肥料分を吸収するので、そのような不安定な物質を安定させる(浄化させるという表現もある)ために、虫や微生物たちが寄ってくるんです。
人間が手を加えるとバランスを崩してしまいます。ちょうどいい具合に人間が施すなんてことは、なかなかできない。 できないから農薬でガードすることになります。
慣行農業は、敵どころか味方も必要としない、畑に殺菌剤を蒔いて、何もいなくなったところにF1の優秀な遺伝子のクローンの作物を、人間が肥料をコントロールして育てます。
虫や病気が出れば農薬でガードして、本来は環境中で浄化されるべきものを人間の体に送り届けて病気の原因にもなっている。
そして何より、優秀な遺伝子をセレクトし、不要な存在は排除し、人間の思い通りに生き物や生態系をコントロールできると錯覚している。
これが今の慣行栽培の考え方だと思います。
自然が人間の思い通りにならないことは、昨今の環境問題として現れています。
そうではなく、自然環境に寄り添い、生物多様性を農業に反映させたもの、いろいろなキャラクターがそこに存在していることが土壌の豊かさであり、社会の豊かさにつながる、そんな思想が僕なりの自然農法です。
無農薬・無肥料。自然農法で栽培したお野菜
おかさげ農園 代表 大江 栄三さん
今後の抱負
もっと無農薬、オーガニックが当たり前の世の中になって欲しいと思ってます。
そのために自然農法の考え方を分かりやすく伝える努力をして生産者を増やすと同時に、オーガニックの生産者を支えてくれる農家以外の地域の支援者を募って、勉強会をしながら、皆で農産物の品質をチェックしたりして、生産を支えるような地域活動(PGSと呼ばれる有機認証制度)の仕組みを、東農地域でも作っていけたら面白いです。
おかさげ農園 商品ご紹介
パーフェクト野菜セットVEGGEY
(漬物3種+ペースト3種+ふりかけ1種)
お料理にすぐ使える3種の野菜ペーストセットに、発酵力が豊富なお漬物、ふりかけをセットにした自然農法の野菜の力を凝縮したパーフェクトセットです。