身体から心を楽にするための8つのアプローチ
この考え方は近年、心理療法や特にトラウマの治療において注目されるようになっています。
具体的にはイリノイ大学のスティーブン・ポージェス博士の提唱する「ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)」という神経に関する新しい理論により、
トラウマなどの症状が、心や考え方の問題ではなく「こわばったままの身体の問題」であり、
その身体の状態に働きかけることでPTSDを始めとする様々な心身の苦しさが治療可能であることが実証され、幅広い臨床現場で応用されるようになりました。
交感神経が刺激されるような出来事ばかりが社会の中にある現在は、多くの人が「小さなトラウマ症状」を抱えておかしくない状況なのです。息苦しい話が続いてしまいましたね。
こういう話を読んでいるとなんとなく無意識に肩に力が入ってきていませんか?
そして呼吸も浅くなり、険しい目になっていたりしないでしょうか?
身体の反応は、頭の理解や認知とは別に、無意識のうちに自動的に起こっています。
自分では大丈夫だと思っていても、身体が反応していると心も自動的に苦しくなってきます。
そんな時におすすめなことをご紹介します。
寝る・食べる・動く、をおろそかにしない
基本ですが、基本が一番大事です!
生き物としてまず安定しましょう。
どんなセラピーも健康法も、寝不足だったら身体には染み込みません。
生き物としてこじれていたらその身体の中で健康な心を持つことはとても困難なのです。
自然の中に出かける
人間は本来自然界の所属です。自然に触れたり、そのエネルギーを感じたときに持つ「畏敬の念」は一番健康に良い感情だという研究結果があります。
身体が一番安心して安定する環境は自然界の中です。公園の木々を眺めたり、空を見上げたりすることもいいですね。
雑談をする
オンラインコミュニケーションはどうしても会議などの「交感神経」のコミュニケーションになりがちです。
対面でもオンラインでも、割とどうでもいい話をリラックスしながらしている時に
副交感神経の中でも腹側迷走神経複合体という部分が働きます。
この働きはほんとうの安心感を感じ身体の緊張を和らげるために一番大事なシステムです。
身体に意識を向ける
心が苦しくなったりストレスを感じたら、まず身体に何が起こっているかに気付いてみましょう。
どこかがこわばっていたり、呼吸を詰めているかもしれません。
まず、やさしい目になって、ふう・・・っと呼吸をほどきましょう。
身体の力を抜いて、自分の身体にやさしくします。
身体をくつろがせる
今は何も努力したり反省したりしなくていい、ただただくつろいでいいんだよ、と身体に語りかけてあげてゆっくりと身体が開放されていく時間を取ります。
ゆったりとソファーにもたれたり横になったりしてもいいし、ヨガやストレッチをしながらでも構いません。時間がなければ、通勤電車で吊り革につかまったまま少し目を閉じながらでも出来ますよ。
時間とスペースがあれば、体をゆすったりごろごろしたり「ダメ人間だ〜」という感じでがんばりをすっかりやめてみましょう。
完全にリラックスできなくても、さっきより少しマシ、になれば十分です。
自分をねぎらう
先へ先へ、と心が焦ったり、未来の不安などに心が引き付けられるときはまず、今までよくやってきてくれた自分の身体をねぎらってあげてください。
生まれてから今日まで、すべてのことをあなたの身体はあなたとともに一緒に経験してきました。
トラウマは身体が記憶するといいますが、悲しいことも嬉しいことも全て、身体は記憶しています。
今日まで健やかさを保ち、バランスを取り続けてくれた身体にねぎらいの気持ちを向けてあげましょう。
「ねぎらう」ことは、未消化になっていることを完了させ、心と身体を大きく回復させる働きがあります。
休息の感覚や、心地よさを「しっかりと時間を掛けて味わう」
時間をかけて味わうことが、心地よい感覚を体に染み込ませて自律神経がバランスを取り直すことの助けになります。焦らず、急がず、じっくりと身体のスピードで変化していく時間をとってあげましょう。
プロの力を借りる
一人で抱えるのがしんどいほどだったら、プロの力を借りましょう。 まずは身体を整えることから。マッサージやヨガのクラスを受けてもいいし、神経のバランスを取ってくれるボディーワークもおすすめです。
どうでしょうか。どれも文字通り「身一つ」でできることがたくさんあります。
「心の物語」が起こっているとき同時に必ず「身体の物語」が進行しています。
心が苦しいときはどうしても心のことや出来事のことで頭が一杯になってしまいますが、
同時に起こっている「身体の物語」に気づくだけで実は身体のシステムは調整されてすこやかに整っていくという生き物的な仕組みがあります。
ぜひ試してみて、あなたにフィットするものを見つけていただければと思います。
こうして、身体に意識を向けて、身体の声を聞き、その声とコミュニケーションしてあげられるようになってくると
自然なやさしさや創造性、好奇心や個性が花開くようになってきます。
このサイトをご覧になっている方はおそらく、「健やかである」ことに高い意識を持った方が多いことでしょう。
人間には「自己調整力」という、自分の心と身体を健やかな方向に導き続ける知性と力があります。自分が何もしなくても、自分の生命を導き養ってくれる力です。
いつどんな時でも、内側から支え続けてくれる力です。
ぜひその力と一緒に、ご自身やご家族のためのすこやかな毎日を作ってい ってください。
ボディー・ワーカー
一般社団法人 OurDynamics 代表理事
WEBメディア『Magellan』編集長
小笠原 和葉 (おがさわら かずは)
こどもの頃から夜空を見上げては「宇宙」と「宇宙を見ている自分」の不思議さに魅了され、大学院まで宇宙物理学を専攻。
その後、自身の健康への問題意識をきっかけにボディーワークの世界に入り、現在は個人セッションの傍ら「心と身体」についての探求を、啓蒙・教育活動をさまざまなフィールドで展開。
人間全体をひとつのシステムとしてとらえ、より良く生きる生きるための身体性や生理学について 個人から企業までそれぞれのニーズに合った形で伝えることをライフワークのひとつとして楽しんでいる。2020年より東北大学大学院医学部にて専門分野の神経科学的研究も行っている。
著書に「理系ボディーワーカーが教える"安心" システム感情片付け術」(日貿出版社) 趣昧はフィギュアスケート鑑賞。一児の母。
力リフォル二ア州認定マッサージプラクティショナー
クラ二オセイクラル・プラクティショナー(CHA)アシスタント・チューター
ソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing®)認定プラクティショナー
宇宙物理学修士
東北大学医学部大学院研究生
小笠原和葉 公式サイト
https://bodysanctuary.jp/